Fast&Slowのディレクターにインタビュー「ストックフォトのモデル演出」

先日、ストックフォトにおける「企画・シーンの作り方」について記事を公開しましたが、皆さんご覧いただけましたでしょうか?
今回は「モデルの演出」についてFast&SlowのディレクターH・Rさんにインタビューを実施しました。モデルにどういった指示をしコンテンツ作りをしていたか、事例も交えて紹介しますので、撮影時の参考になれば幸いです。

解像度高めのシチュエーション共有

ーーー撮影に欠かせないモデルの演出、どういったことに気をつけていましたか?

H・R
H・R

日々の生活に馴染むナチュラルさを感じられるストックフォトを目指していたので、モデルさんには「シチュエーションに合わせた感情の共有」を欠かさずおこなっていました。

「撮影します、動いてください!」という指示だけではこちらが求める表情や仕草になる可能性は低いと思います。企画を練る段階で何を表現したいのか、どんな表情をゴールとするのかを事前に設定し、モデルさんがイメージしやすくなるような具体的な指示をしていました

ーーーモデルさんの魅力的な表情や最適なアングルを見つけるのも重要だと思いますが、どんなことをすれば、その感覚が身に付くと思いますか?

H・R
H・R

ポートレート写真集をたくさん見ることをおすすめします。

写真集は被写体をどんな風に見せたいか、かなり計算されて撮っていると思います。首の使い方、目線の使い方、口の開き方によって印象が微妙に変わってくるので、モデルさんをどう撮るか研究するのに色んな写真集を見るのが良いと思います。

また、モデルさんはそれぞれ個性があって体型や表情に違いがあります。どんな風に演出をかけるとそのモデルさんの魅力が出せるのか、撮影当日にモデルさんと会った瞬間に良いところを見出すように心がけています

事例紹介

この二人のモデルさんはストックフォトの撮影現場で共演することが多々あり既に面識があったので、このシーンのカップル撮影ではあえて照れてる表情を出してその瞬間をおさえるようにしました。

手を繋いでもらったり、目線を合わせてもらう指示をして自然の動きの流れの中で撮れた一枚です。

アクションとしておんぶをしてもらいました。二人の幸せな関係を受け手に感じ取ってもらいたかったので、手をカメラの方に伸ばしてもらい臨場感のある写真にしてみました。

このシーンでは“とにかく可愛い女の子”という設定で、彼と過ごす日常の瞬間をおさえた一枚です。守りたくなるような可愛らしい女の子でいてほしかったので、椅子にちょこんと座ってもらい、ひょっこり顔を覗かせて小動物のようなチャーミングな表現をしてもらっています。

この企画は和食と女の子がテーマです。

美しい姿勢で所作の一つ一つが丁寧な雰囲気がでるように調整していきました。バリエーションとして目線ありのカットもおさせていますが、カメラを意識させないよう被写体と適度な距離で撮り、自然な表情を表現するようにしていました。

そして、このシーンの最終ゴールは幸せそうに食べる女の子です。事前にシーンのゴールは何かをイメージしておくことで目的が定まり、そこへ向かって一連の流れが作れると思います。

親子テーマの撮影では「家でだらんとゆったりしているところ」を伝えて撮った一枚です。ソファにもたれかかってゲームをしているところですが、このモデルさんたちは実際の親子ではありません。なので特に体の距離感やお父さんの目線が子どものゲームにいくようにオフモードの表情を狙いました。

モデルさんの衣装スタイリングもおこなったのですが、スタジオに馴染み違和感がないようなスタイリングを心がけました。また、色味のバランスにもこだわっていて、グレー、ネイビー、カーキとベーシックな色であえてまとめています。写真で伝えたいのはモデルの表情やナチュラルさだったので、そこに目線がいくようにあえて原色は入れませんでした。

上の写真と同じ日に撮ったものです。この表情に至るまでに色んなシーンを撮っていたのですが、子どもモデルさんには「パパのフードを被せてみて」「目隠ししてみて」など、具体的な動作を指示しておさえた一枚です。子どもとの撮影では特に遊んでいる感覚になれるような動作の指示をするようにしていました。

隣にママ役のモデルさんがいて、会話の途中を切り取った一枚です。楽しい会話と上向きの視線、さらに手の向きも上に行った瞬間を撮って、ハッピーで躍動感のある状態が表現できたと思います。

リアリティのある親子を表現すべく、女の子には父親の顔にタッチしてもらい、距離感の近さが出せたと思います。直接触れたり目線を合わせることで、親子の信頼関係を表現できると考えました。

複数人で撮る時は主役を設定し、その主役に目線や意識が向くように他の人を動かします。この時、動きを固定すると作られた雰囲気が出てそれが違和感に繋がるので、ある程度の流れを指示し、自由に動いてもらいながら撮影しました。

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「どんな写真にしたいのか」と明確なゴールを持っておくことで、モデルさんへの動きの指示がより具体的になりますね。写真の完成イメージやシチュエーションの解像度が高ければ高いほど、撮影中に迷うことなく進んでいけるのではないかと思いました。