【ビジュアルで見る日本社会の20年】第1弾:ストックフォトの「旅行像」はどう変わったか?

写真・イラスト・動画・音楽素材のマーケットプレイスPIXTAは、2026年5月31日にサービス開始20周年を迎えます!
サービス開始20周年を記念して、保有する累計1億点超の膨大なビジュアルデータから、日本社会の変化を読み解く特別連載を開始いたしました 。

燃料高騰によりゴールデンウィークの移動コストが上昇する2026年。国内旅行や近場での体験型旅行への関心が高まるなか、旅行のあり方そのものが再定義されています。旅行のあり方が再定義される今、第1弾となる今回は「旅行」に焦点を当て、20年間で蓄積された検索データや販売動向から、日本社会における旅行の変容を分析します。

ビジュアル&注目ワード分析:20年の変遷

2005年〜2010年 ガイドブックとデジカメの時代:誰もいない絶景

2000年代後半の売れ筋:誰もいない絶景が主役。広告素材としての「非日常」

この時代の売れ筋の大半は、「人の写らない風景写真」。南国の美しいビーチや、ヨーロッパ・南米など海外の有名観光スポット、あるいは飛行機をメイン被写体とした素材が人気を集めていました。
当時の国内ストックフォト市場では、日本人モデルを使った人物素材が少なく、入手するには海外サービスを利用するか高額な費用がかかるのが一般的でした。PIXTAはその空白を埋めるべく、2009〜2010年頃から人物素材の拡充に注力。以降、登録数は急激に増加していきます。

当時の旅行:旅行代理店とガイドブックが導く、憧れの地へのパッケージツアー

スマートフォンの普及前夜であったこの頃は、旅行代理店の窓口でパッケージツアーを申し込むのが主流。旅先ではガイドブックや現地の紙の地図を広げて道を探すのが当たり前。「憧れの遠い場所」へのパッケージ旅行が中心だったため、広告素材としても「非日常感のある純粋な絶景」が求められていたと見られます。
また、写真はデジカメ(コンパクトデジタルカメラ)で撮影し、帰国後にパソコンから個人のブログやSNSにアップして「事後報告」として思い出を共有するスタイルでした。

注目キーワード

リゾート、ビーチ、海外旅行、ツアー、デジカメ

2010〜2015年 風景から過ごし方への主役交代

2010年代前半の売れ筋:風景から過ごし方へ。共感を呼ぶリアリティ

2010年代に入ると、写真の主役は風景から「人物(特に2人以上の女性)」へと急シフトします。また、カメラ目線のかっちりとした記念写真よりも、現地のカフェでくつろいだり、ビーチを歩いたりといった過ごし方にフォーカスしたリアリティのある素材が、広告やWebメディアで好まれるようになったと見られます。

当時の旅行:LCCとスマホで旅が激変!女子旅ブームが加速させた週末海外

2011年頃の「女子会」ブームから派生した「女子旅」がトレンド化。2012年のLCC(格安航空会社)元年により、アジア圏へ数千円〜数万円という低価格で行けるようになり、週末海外のハードルが劇的に下がりました。さらにスマートフォンの普及と海外用レンタルWi-Fiの登場で、Googleマップを見ながら自力で移動できるようになり、団体旅行から個人旅行へのシフトが加速。リアルタイムで体験を共有する共感マーケティングが主流となりました。

注目キーワード

女子旅、LCC、スマートフォン(スマホ)

2016〜2020年 全方位への多様化と「エモさ」の追求

2010年代後半の売れ筋:被写体の多様化と、ライティングが紡ぐ情緒的な空気感

「女子旅」一強から、ファミリー、シニア夫婦、ソロ活など、ターゲットが全方位に広がった多様な人物写真へと需要が変化します。また、SNSの成熟に伴い、作り込まれた笑顔の写真よりも、ライティングにこだわった情緒的な空気感(エモさ)のある写真が目立つようになりました。

当時の旅行:「インスタ映え」が旅の目的地に。スマホで現地に溶け込むコト消費へ

2017年の「インスタ映え」流行語大賞に象徴されるSNS映え全盛期。SNSで見つけた絶景を目的地にするスタイルが定着しました。同時に、スマホやSNSの利用層が高年齢層にも拡大したことで、あらゆる世代がネット経由で旅行を楽しむようになります。オンライン旅行予約サイトでの個人手配が当たり前になり、民泊や配車アプリなどを活用し、現地の人の生活により深く溶け込むような「コト消費」型の新しい旅のスタイルが流行しました。

注目キーワード

ファミリー、シニア、民泊

2020年〜2025年:新常識の定着と日本らしさの再発見

2020年代前半の売れ筋:インバウンドを象徴する日本回帰と、絆を再確認する家族の風景

海外からの観光客を強く意識した、都市部のランドマークや伝統文化など「これぞ日本」というシンボリックな写真が急増しました。人物写真においては、外国人観光客を被写体としたインバウンド向け素材の需要が拡大したほか、国内向けには密を避ける自然の中でのキャンプ、サウナ、あるいは三世代ファミリーやシニア夫婦といった、身近な絆を感じさせる写真が求められるようになりました。

当時の旅行:「サ活」も「仕事」も旅に!移動の制限を超えた日本再発見のマイクロツーリズム

コロナ禍による世界的な渡航制限(2020〜2022年頃)という前代未聞の事態を経て、旅行の価値観は根底から覆りました。2023年以降に旅行は再開されましたが、円安とインフレの直撃により海外旅行の予算的ハードルが上昇。「遠くへ行くことだけが旅行ではない」という意識が定着し、グランピングやサウナ旅行、あるいは旅先で日常のように仕事もこなすワーケーションがブームに。一方で、円安を追い風としたインバウンド旅行客をターゲットとするビジネスが一大産業となり、日本の魅力を再構築・発信する動きが活発化しています。

注目キーワード

インバウンド、キャンプ、グランピング、テレワーク、温泉

2020年代後半予想:個人の価値観・人生観の追求の一部としての旅行へ・・?

今後の売れ筋は、脱・定番のディープローカルと、リアルな表現へ?

有名なランドマークや「THE 観光地」を背景にした写真から、「ディープな地方」や「生活の息遣いを感じるローカルな風景」「旅行者の感情の動きを切り取ったビジュアル」へのシフトが予想されます。 また、SNSのトレンドがショート動画中心に移行した影響で、写真にも、動画のワンシーンを切り取ったような躍動感や、あえてブレやノイズを残した無加工・ドキュメンタリー調のリアルな表現が求められるようになるでしょう。さらに、企業の広告素材としては、環境問題や多様性に配慮したビジュアル(マイボトルを持参する姿、バリアフリー対応の旅、多国籍・多様な家族形態など)が増加していきます。

旅行文化予想:「どこへ」より「なぜ」へ。自分の価値観を重ねる、物語消費の旅へ

急増したインバウンドの影響を受けオーバーツーリズムが社会問題化し、有名観光地の混雑や価格高騰が常態化するなか、旅の目的地は定番から分散へと大きく舵を切ります。国内外の旅行者はあえて定番を外すように。
生成AIの普及は、旅行のあり方を超パーソナライズへと進化させ、もはや誰かが作った映える旅をなぞる時代は終わり、それぞれのマニアックな知的好奇心——建築、郷土料理、ニッチな体験——を掘り下げること自体が、旅の主目的となります。自分にとっての旅の理由を追求する行動は、地域の文化や経済に直接貢献するサステナブル・ツーリズムとも共鳴し、旅を通じて個人の生き方を表現する動きとして定着していくのではないでしょうか。

さいごに

本プロジェクトで扱うデータは、次世代のAI開発を支える「文化的多様性の基盤」としての側面を持っています 。

  • タグの解像度と日本文脈: 単に「旅行」という分類ではなく、「女子旅」「ワーケーション」といった、日本市場特有の詳細なメタデータを付与し、文脈を理解する精度の高いAI学習を可能にします 。
  • クリーンな学習ソース: すべての素材は適切な権利処理(モデルリリース等)がなされており、AI学習における倫理的かつクリーンなソースであることを保証します 。
  • 概念の可視化: 「心理的安全」や「日本独自の旅の安心感」など、数値化しにくい日本的文脈を、豊富なデータによって体系化しています 。

ピクスタは、「ストックフォト企業」から「日本文化のデータアーカイブ企業」へとその役割を拡大し、ビジュアルデータの価値を“文化資産”として再定義してまいります 。

本連載では、今後も「シニア」、「ビジネス」等様々な切り口で、1億点以上のコンテンツから時代を振り返っていきます。また、20周年記念として、PIXTAの20年のコンテンツの変遷を振り返る企画も2026年6月上旬頃公開予定です。どうぞお楽しみに。