Profile
1978年千葉県出身。フリーフォトグラファー。雑誌やWebなど様々な媒体で活躍中。
PIXTAでは女性らしく柔らかな雰囲気のコンテンツが魅力で、購入者のジャンルを問わず、幅広い支持を集める。Ushicoというクリエイター名は、ペットのウサギの名前「Ushioくん」から。
今回は「撮影準備編」ということで、撮影前のUshicoさんの仕事場へお邪魔しました。撮影企画の立て方や、売れるコンテンツ分析、モデルの選び方などなど、みなさんのコンテンツ制作の参考になることが満載です!
自宅の仕事部屋
売れるテーマを考える

売れ筋のテーマだけを狙って撮ってる人も多いので、同じようなものを撮っていたのではライバルが多いんです。逆に誰も撮っていないもの(ライバルがいないもの)の方が、当たると売れ行きも良いですし、撮っていても楽しいんですよ。
最近だとタイ古式マッサージやマタニティーヨガのコンテンツとかがそうですね。1回の撮影で、絶対に1テーマは「他の人が撮っていない何か」を探して撮るように心がけています。 そういうマニアックなネタが売れるとすごく嬉しいんです! 逆に、ハズして全く売れないこともありますけどね(笑)。
撮影の企画を立てる

企画を立てるのには、人それぞれやりやすい方法があるとは思いますが、
私はきっちりとした企画書や参考画像、撮影当日の詳細なタイムスケジュールは、ほとんどの場合用意していません。
広告などの撮影ではスケジュール通りに進め、予定していたカットを予定していた通りに撮る事が求められますが、ストックフォトの場合はそうではないからです。
代わりに「思考の地図」の様なものを手書きで箇条書きしています。
上の写真は【ハウススタジオで3名のモデルさん(ミドルの男女+30代女性1名)を撮影する企画】を考えているときのものです(※これは、撮影テーマ・スタジオ・モデルさんが決定してから書くことが多いです)。
書いていく順番としてはまず、モデルさんからイメージできる関係性や役柄(ミドル夫婦、ファミリー、母と娘、ビジネスウーマン、医者と患者、妊婦)、そして今回のハウススタジオで撮影可能なシチュエーションとロケーション(キッチン、カフェ、ベッドルーム、窓辺、白バック)の組み合わせを思いつくかぎり書き出します。
そしてその中から今回の撮影でマストに撮るもの(自分がまだ撮った事がない、PIXTAに少ない、今回のスタジオを特に活かせるetc)を決めて○や下線を引き、必要な小道具や衣装、このシーンは1番目でこれは後半、などのざっくりとした撮影の順番も書き加えたりします。
ただこの紙は、撮影現場に持って行ってもほとんど見ない事が多く、撮影現場用というよりは、肉筆で書くという行為で
頭に入れるとか、持って行く小道具を準備する時に見るためのものという意味合いが強いです。
ストックフォトの現場で大事なのは、一日の撮影でどれだけ多彩なシーンを撮れるかということと、
その場で実現可能な一番良い物を撮るということ。
当日現場で初めて解る天気、モデルさんの個性、ロケーションなどを見て、事前に書き出してあったり小道具を用意していても、ちょっと違うなと思えば撮らないこともあるし、逆にいいアイデアが浮かべば、全く予定していなかったものを撮る事もあります。そういうフレキシブルさが、ストックフォトの撮影現場では良い結果を生むと思います。
モデル選び
モデルキャスティングシステムを使う際は、コンポジ(資料写真)と実際のヘアスタイルが違う場合も多いので、まずはモデルさん本人のブログをチェックします(ブログが無いモデルさんは事務所に確認する場合も)。
チェックした方がいいのは「女性のネイル」。派手でも企画的に問題がないものならばOKですが、役柄的に(医療、エステティシャンなど)、ネイルの色が派手だったり長すぎたりすると不自然になるシチュエーションの場合は、モデル事務所にお願いして事前の確認をしています。
事前に想像である程度のイメージは描きますが、実際は会ってみないと分からないので、初めて会うモデルさんの場合「会ってから撮影内容を考える!」くらいの気持ちでいます。現場でこのモデルさんは何がハマる(似合う)かな?どんなシーンで魅力的に写るかな?と考えながら進めたいので、事前に予定していたものがハマらなかったらすぐに違うものを撮れるよう、多めに撮影準備(実際に撮るものの2倍くらい)をしておきます。
お気に入りのモデルさんがいたとしても、同じ人ばかりを撮らないように気をつけています。自分の持っているコンテンツの幅を広げるために、いろいろなジャンルの人物を撮ることが重要です。
髪色がかなり明るかったり、ちょっと派手なメイクのモデルさんは、ストックでは売れないと思っている人もいるかもしれないんですが、全然そんなことないですよ。同じ雰囲気の子ばかりを狙って撮るよりも、いろいろな雰囲気のモデルさんを幅広く撮るほうが、売り上げにはつながると思います。
小道具準備

小道具は安っぽくならないように注意しています。物によって100円ショップでも良いものはたくさんありますが、
小道具のクオリティはコンテンツの重要な要素になるので、ある程度の初期投資も大切だと思いますよ。特に、自分がよく撮るテーマで使い回せる定番アイテム(手帳やペン)は、ちょっと良いものを用意したほうがいいと思います。
「誰でも簡単に安く手に入る小道具」を使ったコンテンツは、やはり大勢のクリエイターが撮っているので、正直競争が激しいです……。
時にはちょっとお金をかけてみたり、用意が面倒だったりする小道具使いで差を付けるのも、売れるコンテンツ作りには大事なポイント。

コンテンツ制作の時期としては手遅れな小道具(※例えばクリスマスグッズなら、クリスマス前が良いものが手に入りますが、クリスマス時期にクリスマスの写真をアップしても時期的にはほとんど売れません。)だとしても、これは来年用!と割り切って、季節に逆らわず旬の小道具を使った撮影をするのも手です。
今売れるものだけでなく、長期視点で見てコンテンツをアップすることも大事だと思いますよ。冬に冬の小物を撮るのも同じ視点。何より気候に逆らった服装(冬に夏っぽい服装、夏に冬っぽい服装……)での撮影は、準備するクリエイターも、撮られるモデルさんも大変です!


造花は好きなアイテムなので、浅草橋の問屋街などで本物っぽいものを吟味して買い集めてます。
ブライダルブーケやカーネーションの花束などは、自分で手作りしました! 母の日イメージは、いろいろな年代のモデルさんで数回撮影できましたし、その他のシーンでも、画面の中に花が加わるとぐっとイメージが変わるので、幅広く使える小道具です。
左下のプルメリアは新婚旅行中にバリで購入。エステ系アイテムはwebやテレビを見たりして気になった時に、「これって通販で買えるのかな!?」と検索して買っています。
使える!ファッション小物はコレ!

こちらが撮影セット!
KATAのカメラバッグ(フォトオーガナイザー フライバイ77PL)
は、たくさん入るローリングバッグで重い機材を入れても、楽に移動できます。フラップの内にノートPC が入り、外側には三脚をくくり付けられてとても便利!
カメラバックに加え、大小のレフ、三脚、バンク、2400wsのストロボ1台2灯(Photona HERO-24α)が用意する機材の標準です。(※ハウススタジオで晴れた時は2400wsは使わないことが多い。)

A. Canon EOS 5D markll ×2台
機械は突然壊れるものなので、サブのボディは必ず用意します。と、言いながらものすごいシャッター数を切っているのに全然壊れないので、なかなか買い替えられません……。
B. Canon スピードライト580EX ll
C. SUNSTAR MONOSTAR X4
クリップオンのバウンスのみでの撮影やクリップオンでモノブロックをスレーブさせて使う事も多いです。ヘッドの下には10㎝のACの延長コードも入っています。
D. レンズ
(左から)
Canon 16-35mm F2.8
Canon 24-70mm F2.8ll
Canon 100mmマクロ F2.8
Canon 70-200mm F2.8
24-70mm1本しか使わないことも多いです。
E. メディアケース
コンパクトフラッシュ、32GB×1枚、16GB×3枚、8GB×2枚、1回の撮影で使うのはRAWデータでだいたい30~60GBくらい。
撮影中にカードが足りなくなった!なんてことは絶対あってはならないので多めに用意。
E. バッテリー各種
カメラ用とストロボの単3エネループ
バッテリーも必ず予備を用意。
水準器、レリーズなどを袋にまとめてます。
F. ワイヤレスシンクロ
無線で快適に撮影できますし、窓の外などに設置したストロボを遠隔で発光させられるのでとても便利。他のクリエイターさんとスタジオをシェアするときには必須のアイテムです!
その他
服のホコリを取ったり、敷物のめくれを留めたりするのにも使える「パーマセルテープ」や、レンズを拭いたり、小道具の指紋を拭きとったりする「クロス類」も入れています。